■ 「恋と恋するショートストーリー」 雪菜編 「彼女のホントの魅力」 ■

和 哉
「さてと、舞原さんはどこかな……おっ、いたいた」
雪 菜
「………………」
和 哉
「独りで読書か、他人を寄せ付けようとしないオーラが半端なく出てるけど、そんなの気にしてられないよな」
和 哉
「反対派のリーダーである彼女とキッチリ話をしないと、事態は変わらないもんな」
和 哉
「あの……舞原さん、ちょっといいかな?」
雪 菜
「………………」
和 哉
「あ、あの、そんなに睨まないでよ」
雪 菜
「……邪魔よ」
和 哉
「読書の邪魔したのは、悪いけど……」
雪 菜
「大崎くんの存在そのものが、邪魔だと言っているの。さっさと用件を言いなさいよ」
和 哉
「えっ?」
雪 菜
「用件は何って聞いているの。すぐに済ませて、私とは別の空間にさっさと退散して欲しいわ」
和 哉
「用を済ませて、この教室から出ていけって事ね。じゃあ、え~と……なんて言うかさ……
和 哉
 やばっ、どう話を持っていくか、考えてなかった!」
雪 菜
「そう……時間の無駄のようね」
和 哉
「いや、そうじゃなくて、その……あっ、そうだ! ケータイ」
雪 菜
「携帯?」
和 哉
「そう、携帯! 舞原さんのケータイ番号、教えてくれないかな」
雪 菜
「………………」
和 哉
「いや、そんなに露骨に嫌な顔をしなくても」
雪 菜
「黙りなさい、この性犯罪者」
和 哉
「はぁ??」
雪 菜
「大崎くん、貴方、私の電話番号を聞きだして、どうするつもり?」
和 哉
「どうって、何かあった時、相談したいと思ってさ。舞原さんは反対派のリーダーだし」
雪 菜
「そんな建前はいらないわ、正直に理由を答えなさい」
和 哉
「なんか誤解してない? 俺、ホントに……」
雪 菜
「今、呼吸が少し荒くなったわね。やっぱりよからぬ事を考えているようね、大崎くん」
和 哉
「舞原さんがグイグイ攻めてくるから、困ってるだけなんですけど」
雪 菜
「口答えしないで、愚かな民と書いて、愚民の分際で」
和 哉
「携帯番号聞いただけで、無条件で愚民扱いかよ」
雪 菜
「いえ、訂正するわ、愚民以下ね。今日から愚民以下の地位は『大崎』とさせて頂くから」
和 哉
「あのさぁ、携帯番号聞いたくらいで、そこまで言う?」
雪 菜
「言うわよ。だって……電話の向こうで私の声を聞いて、貴方がハァハァするのが目に見えているんですもの」
和 哉
「そんな事、するかーっ!!」
雪 菜
「するわよ、100%。『今日はどんなパンツ穿いてるの?』とか聞きながら、ハァハァするつもりに決まってるわ」
和 哉
「女がパンツとか言っちゃダメだって、舞原さん」
雪 菜
「あらごめんなさい、パンティだったわね。大崎くんはパンツよりパンティって単語に興奮を覚えるんだものね」
雪 菜
「あなたのマニアな趣味、失念していたわ」
和 哉
「あのさ、そうじゃなくて……」
雪 菜
「じゃなければ相談にかこつけて、私の乳頭の色を聞きだそうというのね。これは図星でしょ?」
和 哉
「んなこと、聞かないって……って、仮に聞いたって教えてくれないくせに」
雪 菜
「黒よ、くすんだ赤みの残った黒」
和 哉
「………………へっ?」
和 哉
「そ、それ……本当、なの?」
雪 菜
「真実は自分の目で確かめる事ね……貴方にもし、その勇気があるのなら」
和 哉
「その言葉、俺はどう受け取ったらいいんでしょうか?」
雪 菜
「どうぞ、お好きに」
和 哉
「も、もう……舞原さんも、エッチな冗談とか言うんだな、意外だよ」
雪 菜
「大崎くんのレベルに合わせてあげているのよ。そんな事もわからないのかしら」
和 哉
「舞原さんから見た俺って、そんなエロイメージなんだ」
雪 菜
「今頃知ったの? ついでに教えてあげると貴方っていつか、刺されるタイプよ」
和 哉
「そんな猟奇的なタイプ、却下させてください。舞原さんに言われると、本気で怖いから」
雪 菜
「貴方にも怖いものがあるのね。理性もプライドも捨てているから、もうう失うものなんてなさそうなのに」
和 哉
「どれだけ俺は、絶望の中で毎日を送っているんですか!」
雪 菜
「あら、違うの?」
和 哉
「激しく違うって! それに俺、そんなイタズラ電話なんかしないし」
雪 菜
「じゃあ、電話番号を聞きだして、どうしようと言うの?」
和 哉
「そ、それは……そう、こうやって馬鹿話したいだけだよ」
雪 菜
「……この、私と?」
和 哉
「他に誰がいるの」
雪 菜
「………………」
和 哉
「さっきだって舞原さん、楽しそうに話していたし」
雪 菜
「これが楽しそうですって? ひどいわ、それじゃまるで私がドエスみたいじゃない。ブサイクなドエス女って言いたいの?」
和 哉
「ドエスは知らないけど、ブサイクはないって。舞原さん、綺麗だし」
雪 菜
「えっ………………」
和 哉
「一緒に馬鹿話してさ、笑ったらもっと綺麗だと思うけど」
雪 菜
「ゴホン……そんな恥ずかしいセリフ、よくも言えるわね。羞恥心を忘れて生きてる証よ」
和 哉
「舞原さんだって顔、赤いけど。恥ずかしいの?」
雪 菜
「うるさいわね……放っておきなさいよ」
和 哉
「無理だよ、それ。だって舞原さんがホントの魅力を見せたら、男はみんなほっとかなくなるよ」
雪 菜
「そ、それがどうしたっていうの……そんな聞き飽きた言葉で、私の心が動くとでも……」
和 哉
「独りでいるのもいいけど、たまにはこうして俺と話そうよ……ってどうして目を反らすのさ」
雪 菜
「もう見ないで、私を見るのは禁止よ。貴方の間の抜けた顔をみると、熱が出てくるのよ。40度以上のね」
和 哉
「聞けないね。真剣に話す時は、ちゃんと人の目を見て話しなさいって、小学校で習ったから」
雪 菜
「学力が小学校で止まってる大崎くんには、何も言われたくないわ」
和 哉
「あれっ、ますます顔が赤くなってきたけど」
雪 菜
「更に熱が上がったのよ。もうすぐ50度になるわ。これで私が死んだら、貴方は犯罪者よ」
和 哉
「わかったよ、今日のところはもう見ないでおいてあげるからさ」
雪 菜
「うぅぅっ、その上から目線……大崎くんのクセに生意気よ」
和 哉
「ジャイアンみたいな言い回しだね、舞原さん」
雪 菜
「じゃ……いあん?」
和 哉
「さすがの舞原さんも知らない事があるんだ、あの国民的イジメっ子を知らないなんて」
雪 菜
「無駄な知識は頭に入れない事にしているのよ。とにかく、人の顔をジロジロ見ないでよ……このド変態っ」


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