■ 「恋と恋するショートストーリー」 萌葱編 「お兄ちゃんは特別」 ■

和 哉
「屋敷さんさ、まだ男子は苦手?」
萌 葱
「ううっ、それはもえぎにはイジワルな質問です、お兄ちゃん」
和 哉
「悪かった、無理に答えなくていいよ。でも俺にはずいぶん、慣れてくれたからさ」
萌 葱
「だって……お兄ちゃんは、雪菜ちゃんや西原さんとも仲がいいから」
和 哉
「あの二人が親しくしている俺は、安全パイって事なんだ」
萌 葱
「もしかして……怒ってる?」
和 哉
「まさか。屋敷さんには、俺だけが特別なんでしょ、嬉しいって」
萌 葱
「そ、そう……です」
和 哉
「そんな風に言われたら、悪い気はしないって」
萌 葱
「本当ですか? 良かったです~」
和 哉
「うおっ! いきなり、じゃれついてくるなって」
萌 葱
「どうしてですか? ただのコミュニケーションですよ、お兄ちゃん♥」
和 哉
「甘いな、屋敷さん! もし俺が狼だったら、どうするんだ?」
萌 葱
「お兄ちゃんは、実は狼さんだったんですか……なんか、カッコいいです~」
和 哉
「そういう意味じゃなくて……わっ、くっつき過ぎ、落ち着いて俺の話を聞いてくれよ~」
萌 葱
「はぁ~い、もえぎ、ちゃんと言うこと聞きますよ。それでお兄ちゃん、お話って?」
和 哉
「それは、その……あっ、そうだ。屋敷さんにも聞いておこうかな」
萌 葱
「何をですか?」
和 哉
「屋敷さんのメアド、教えてもらえる?」
萌 葱
「はい、いいですよ♪」
和 哉
「はい、ダメ!! そこは『知らない男の人にはメアドは教えられません』って言わなくちゃ」
萌 葱
「だって、知ってる人です……それにお兄ちゃんだし♪」
和 哉
「それはそうだけど」
萌 葱
「はいこれ、もえぎの携帯です」
和 哉
「ありがとう。でもプライバシーの塊であるケータイ、こんな簡単に他人に渡すなんて……やっぱりダメ」
萌 葱
「えっ?」
和 哉
「俺ちょっと、屋敷さんが心配になってきたぞ、マジで」
萌 葱
「大丈夫ですよ。もえぎこう見えても、しっかりしてますよ」
和 哉
「……ホントに?」
萌 葱
「本当です!!」
和 哉
「『お菓子あげるからついておいで』って言われて、知らない人について行っちゃダメだからね」
萌 葱
「もぉ、お兄ちゃん、またもえぎを子供扱いっ、そんなことしないもんっ!!」
和 哉
「怪しいな~、現にケータイは俺の手の中だし」
萌 葱
「それは、その……お兄ちゃんだけは、特別だから」
和 哉
「特別、か……だったらいいや」
萌 葱
「もう、お兄ちゃん、恥ずかしいこと、言わせないで」
和 哉
「うん。顔真っ赤になってる」
萌 葱
「うううっ」
和 哉
「恥ずかしがる屋敷さんも、何とも可愛いなぁ♥」
萌 葱
「可愛い……ですか?」
和 哉
「小動物的な可愛さで、かなり萌える♥」
萌 葱
「もえぎ、人間ですっ」
和 哉
「わかってる、わかってる。ちゃんとお兄ちゃんは分かってるぞ」
萌 葱
「なでなでしても、ごまかされませんっ!」
和 哉
「そうだな……じゃあ、だっこしてあげよう」
萌 葱
「また、子供あつかいしてっ、萌葱は大人なんですっ」
和 哉
「大人でも、お姫様だっこはしたりするだろ?」
萌 葱
「お姫様だっこ? そ、そんなの……もえぎは、しなくていいの」
和 哉
「遠慮しないで……よっと、屋敷さん軽いなぁ~」
萌 葱
「お、お兄ちゃん~!?」
和 哉
「やばっ、なんだこの小さい生き物、俺の腕にすっぽり収まっちゃう、ああっ可愛いすぎ、これぞ萌え♥」
萌 葱
「ダメなの、降ろして~」
和 哉
「そうやって、じたばたする屋敷さん、GOOD」
萌 葱
「もう、お兄ちゃんなんて嫌いですっ」
和 哉
「それは困る、嫌うのは禁止だ」
萌 葱
「じゃあ、降ろしてください」
和 哉
「うん……でももう少し、このままで?」
萌 葱
「降ろすですっ」
和 哉
「はいはい、ごめんね屋敷さん、許してね、なでなで~」
萌 葱
「も、もぉ、お兄ちゃんはすぐ調子に乗るんですからっ、ここはもえぎが大人の対応で許すんですよ」
和 哉
「ありがとう~、そうやって一生懸命大人ぶってみせる屋敷さん、またいい♥」
萌 葱
「んっ?」
和 哉
「あっ、せっかく貸してもらったんだし、アドレス登録しないと。ケータイちょっと弄ってもかまわないかな?」
萌 葱
「ご自由に、どうぞです」
和 哉
「じゃあ、お言葉に甘えて……うっ、この待ち受けは(汗)」
萌 葱
「そう、正義の美少女戦士、キュアプリです。いいでしょ~♪」
和 哉
「これって日曜の朝にやってるヤツだよね?」
萌 葱
「はいっ♥」
和 哉
「もう機嫌直ってる、さすがキュアプリマニア。屋敷さんを怒らせたら、このネタを振ろう」
萌 葱
「その待ち受け、番組中にでるパスワードを入力しないと、もらえないんですよ」
和 哉
「そ、そうなんだ、スゴイね」
萌 葱
「えへん、です♪」
和 哉
「えーと……これが屋敷さんの番号だね。じゃあ俺のケータイから屋敷さんに電話をかけてっと」
 ピリリッ♪ ピリリリリッ♪
和 哉
「ケータイの着信音まで、キュアプリなんだ」
萌 葱
「これはキュアプリ携帯サイトからもらってきたんです。もえぎ、プレミア会員なんです♥」
和 哉
「はぁ~、そこまでやってる……本当にキュアプリ、大好きなんだね」
萌 葱
「はいっ、日曜の朝は正座してTV見てますよ。そうだ、来週の予告では次回、新しい仲間が増えるかもしれないんです。それでそれで……」
和 哉
「キュアプリについて熱く語る屋敷さん……これまた萌えだな」
萌 葱
「ですから絶対、来週は見逃せませんっ!!」
和 哉
「そうか、じゃあ俺も、来週はちゃんと見ないと」
萌 葱
「はい♥♥」
和 哉
「しかしホント、可愛いよなぁ」
萌 葱
「キュアプリ、可愛いですよね~、それでね、お兄ちゃん。今度キュアプリの新グッズで……」
和 哉
「……可愛いのは、屋敷さんなんだけど」
 ………………
…………
……
萌 葱
「エヘヘッ、お兄ちゃんとアドレス、交換しちゃった♪」
萌 葱
「お兄ちゃんからの、着信履歴……男の人からの電話、お家の人以外、初めて」
萌 葱
「着信名も『和哉おにいちゃん』で、登録しちゃったし」
萌 葱
「もえぎ、一人っ子だったから、ずっとお兄ちゃんが欲しかったんだ」
萌 葱
「優しくて頼りになる、お兄ちゃん♥」
萌 葱
「昨日読んだマンガに、お兄ちゃんっぽい優しいキャラが出ていたけど」
萌 葱
「ヒロインがラブレターで告白するシーンなんて、お兄ちゃん頭に浮かべて読んじゃったし」
萌 葱
「……あれ、すっごくドキドキしてる」
萌 葱
「……そうだ、もえぎもお兄ちゃんにラブレター出してみようかな。キュアプリのレターセットで書いちゃおう」
萌 葱
「お兄ちゃん、どんな返事くれるかな……ふふふっ♪」
萌 葱
「……もう、もえぎのバカ! お兄ちゃんは、お兄ちゃんなのに」
萌 葱
「ラブレターって、恋人になる人にあげるものなのに……」
萌 葱
「どうしてお兄ちゃんが、恋人ってことになっちゃったのかな……ううっ、恥ずかしいよぉ」
萌 葱
「今日のもえぎ、おかしい。顔がいつもより熱いかも………………ふしゅゅゅ~」


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