■ 「恋と恋するショートストーリー」 和哉編 「待ち受け画面の彼女」 ■

璃 歌
「まったく、アンタなんか、アンタなんか……ハァ、ハァ」
和 哉
「えっと……とりあえず、俺に対しての罵詈雑言は終わった?」
璃 歌
「くっ……ちょっと、待ってなさい」
 ガサ、ガサゴソ……
和 哉
「鞄から一体、何を……まさか護身用の武器でも隠し持ってるんじゃ!?」
璃 歌
「そんなの、アイドルが持ってるはずないでしょ、アンタバカぁ!?」
和 哉
「それじゃ、何を……」
璃 歌
「………………はい、これ」
和 哉
「これは……名刺?」
璃 歌
「そうよ、特別なんだからねっ!」
和 哉
「手書きの名刺か……おぉっ、マジで携帯番号にメアド、もらっちゃっていいの?」
璃 歌
「いらないなら、すぐに返して欲しいんですけど~」
和 哉
「貰います、頂きます。それにしてもこれ、すごいデコってるよな」
璃 歌
「アイドルの名刺なのよ、これくらい当然よっ」
和 哉
「森永さんってさ、ケータイもデコりまくってるもんな」
璃 歌
「ふぅん……私のケータイのことなんか、よく知ってるわね」
和 哉
「あれは目立つだろう、かなりゴツいし……
璃 歌
「……ゴツい?」
和 哉
「……いや、可愛いし」
璃 歌
「でしょ♪ あれだけデコるの、苦労したんだからね」
和 哉
「男からみたら、あれってよくわからない趣味だけど……」
璃 歌
「……んっ、何か言った?」
和 哉
「な、なんでもないって。それよりもカード、ありがとな」
璃 歌
「礼なんていいから、さっさと登録しなさいよ」
璃 歌
「そんで、即メールとアンタのケー版、よこしなさい!」
和 哉
「わかったよ、じゃあえ~と……」
璃 歌
「遅い! 私がやるわ」
 ピピピピピ、ピピピパピピパパッ、ピピピピピッ
璃 歌
「こんなの超カンタンじゃない、何もたもたやってんのよ」
和 哉
「早い、早すぎる……指の動き、ハンパないな」
璃 歌
「これくらい乙女のジョーシキよ……はい、登録終ったわ。受け取りなさい」
和 哉
「おっと、投げるなぁ! ったく、扱い乱暴だなぁ」
璃 歌
「アンタがボーとしてるのが悪いのよっ」
和 哉
「そんな……でもやってくれて、楽だったかも」
璃 歌
「ついでに、色々設定し直してあげたわよ……感謝しなさい♪」
和 哉
「えっ………………ゲッ、ちょ、ちょっと、なんだよこれ!? 待ち受け変わってるし」
和 哉
「あっ、着メロまで変えてある、俺のお気に入りの曲だったのに」
璃 歌
「パーフェクトに『森永璃歌仕様』にしてあげたわ、嬉しいでしょ▽」
和 哉
「うううっ……後で絶対、元に戻さないと」
璃 歌
「勝手に変えたら……ねじ切るからね♪」
和 哉
「どっ、どこをっ!?」
璃 歌
「ふっ……ふふふっ▽」
和 哉
「恐いって、なんだ、この笑み……待ち受けの森永さんは天使の笑みになのに、本人はまるで……」
璃 歌
「まるで……なにかしら?」
和 哉
「な、なんでもないです……はい」
璃 歌
「あっ、ちょうど車がきたわ。それじゃ大崎和哉くん、ごきげんよう」
和 哉
「ご、ごきげん……よう……はぁ~」
 ………………
…………
……
璃 歌
「ったくもう、全く腹立たしい……あのカード、ずいぶん前から用意してあったのに、やっと渡せたわ」
璃 歌
「あの朴念仁、絶対気付いてないわ、間違いない……」
璃 歌
「とはいえ、一応目的は達成出来たし……フフッ、アイツのメアドもゲット成功♪」
璃 歌
「早速今夜から、ガンガンにメールを送ってやるんだから♪」
璃 歌
「それにあの待ち受けと着メロ……あの存在を知ったら、西原さんや舞原さんはどう思うかしら?」
璃 歌
「意識するわね、絶対意識しまくりよ、120%慌てふためくわ」
璃 歌
「正直、彼女達と比べて一歩二歩、出遅れていることくらい……分かってるわよ」
璃 歌
「でも……もぉ、あんなヤツでも、好きなんだもの、しょうがないじゃない!」
璃 歌
「後悔だけは絶対にしたくない、自分の信じる道を突き進んでやるんだから」
璃 歌
「だって、私は『森永璃歌』なんだから!」


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