■ 「恋と恋するショートストーリー」 代歩編 「二人の番号交換」 ■

和 哉
「エロ本の件はともかくとして、俺達、男女間の橋渡しをしなくちゃならないんだ。具体的に行動していかないとな」
代 歩
「具体的って……たとえば?」
和 哉
「そうだなぁ……今は女子の半数以上が反対派だろ。反対7割、中立という名の無関心者が2割。このままでいいっていう賛成派は、わずか1割だもんな」
代 歩
「……それ聞くと、確かにため息つきたくなるわね……はぁ~」
和 哉
「だからさ、ここはやっぱり反対派のボス、舞原さんと話をつけるしかないんだよな~」
代 歩
「舞原……雪菜、さん?」
和 哉
「そう。反対派代表のボス、舞原さんを通して、反対派に言ってもらうしかないんだよな……」
代 歩
「……ふーん、舞原さんを説得するの、和哉」
和 哉
「今は、それしかないだろうな」
代 歩
「和哉に、和哉ごときにそんなの、できるのかしら」
和 哉
「『ごとき』とは何だよ、嫌な言い方するなぁ。確かに俺は凡人、対して彼女はクラス委員、頭の回転もいい、キツい事もズバズバ言うもんな」
代 歩
「ええ……おまけに、和哉好みの美人だし」
和 哉
「それは今、関係ないだろう!」
代 歩
「……フン、否定しないんだ」
和 哉
「とにかく、誠意を持って話せば、舞原さんだって力になってくれそうな気もするんだよ……逆に怒らせそうな気もするけど」
代 歩
「何よ……舞原さん、舞原さんって」
和 哉
「何拗ねてるんだよ、代歩」
代 歩
「そ、そんなの……なんで、わたしが……」
和 哉
「……あっ、もしかして」
代 歩
「えっ?」
和 哉
「俺が交渉がヘタだから、代歩が直接、舞原さんに話に行きたいのか?」
代 歩
「………………」
和 哉
「実はその方が、俺も楽なんだよな。だけどなんつーか、こういう事は自分でやらないとダメな気が……」
代 歩
「……わかったわよ、和哉の好きにすればいいでしょ! 好きなだけ美人の舞原さんと話してくればいいじゃないの」
和 哉
「また『美人』かよ。どんだけ美人を強調したいんだ、代歩。そういう代歩だって充分キレイなくせに」
代 歩
「えっ……和哉、今のって……」
和 哉
「この前、うちのクラスの竹下が言ってたぜ。それに鷹哉もいつも言ってるし」
代 歩
「………………」
和 哉
「褒められて良かったな、代歩」
代 歩
「ぅぅぅ……良くないわよっ」
和 哉
「なっ、何だよ、急に大声出すなよ、ビックリするだろ」
代 歩
「フン、和哉が変な事ばっかり言うからよ」
和 哉
「そんな変な事、言ったかなぁ。じゃあ俺、そろそろ舞原さんのところに……」
代 歩
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、和哉。だったら、その……これ」
和 哉
「これって……ケータイがどうかしたのか?」
代 歩
「和哉の携帯番号、教えなさいよ」
和 哉
「別に良いけど……なんで?」
代 歩
「か、勘違いしないでよね。委員会の仕事が円滑に行くようにする為よ……舞原さんとの話、どうなったか気になるし」
代 歩
「だから話が終わったら、ちゃんと報告して欲しいのよ」
和 哉
「あっ、そういう事か。いいよ、ちょっと待ってて」
代 歩
「……ドキ、ドキドキ……」
和 哉
「………………あっ、代歩」
代 歩
「なな、何よ、和哉!?」
和 哉
「どうせなら、メアドも交換しとこうぜ。ほら、赤外線」
代 歩
「うう、うん、赤外線……あっ、来た」
和 哉
「よし、登録完了。じゃあ俺、一旦教室戻るから。代歩は?」
代 歩
「わたしはもう少し、ここにいるわ……まだ時間あるから」
和 哉
「そうか、じゃあまた後でな」
代 歩
「うん……あっ、そのお弁当箱、ちゃんと洗ってから返しなさいよね」
和 哉
「わかってるって」
代 歩
「そう言って、すぐ忘れるんだから。持ってこなかったら、明日のお弁当はナシだからね」
和 哉
「へいへーい」
代 歩
「……行ったかな、行ったわよね、和哉」
代 歩
「……よしっ、よしよし、わたし、ぐっじょぶ♪」
代 歩
「西原代歩、ついに大崎和哉の連絡先、ゲット~」
代 歩
「付き合いが長すぎると、なかなか聞くに聞けなかったのよね。家だって近いし、上がりたい放題だし」
代 歩
「ようやく今日、自然な流れが作れて、ラッキーだったわ」
代 歩
「あっ、忘れないうちに登録しとかないと……この日の為に空けておいた一番最初の番号」
 ピピッ、ピピピッ
代 歩
「よし、登録完了っと!」
代 歩
「これからこのケータイに、和哉から電話やメールが来るのね」
代 歩
「それだけでもう、いつものこのケータイが特別なものに見えてくるから、不思議よね……フフフッ」
代 歩
「なんだかマジラブ1000パーセントって感じかな~、るるる~♪」
代 歩
「………………」
代 歩
「はぁ~、危ない危ない。今歌いながら踊ってたの、誰かに見られたりしてないわよね?」
代 歩
「次の授業までに、このにやけ顔を戻さないといけないのに……ダメ、ケータイ見ているだけで、嬉しくてニヤついちゃうじゃない、もぉ」


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